モリシタクサアリ Lasius morisitai Yamauchi, 1979*
*Maruyama, 2005においてLasius morisitaiはLasius capitatus (Kuznetsov-Ugamsky, 1928)のシノニム(同種)とされているが, このページでは日本産アリ類図鑑, 2014に準拠した学名Lasius morisitaiを暫定的に使用していることに注意
モリシタクサアリの美しい標本写真, 生体写真を撮影し, 一般に同定が困難とされているクサアリ亜属の同定のポイントをまとめました. 本種は同属他種のコロニーに社会寄生をする形でそのコロニーを創設します.
ワーカー
☆ ワーカーの同定ポイント
- 頭部の伏毛:疎
- 腹柄節 (側方):逆V字, 高い, 前縁下方に角はない
- 腹柄節 (後方)
- 側縁:ほぼ平行
- 背縁中央部:凹む
参考:寺山 守 他『日本産アリ類図鑑 』(2014) 朝倉書店
女王
雄
ギャラリー
分布と生息環境
木の根本付近に営巣し, 大規模な行列を形成して採餌する.
図鑑の記載とは異なり, 市街地でも数コロニーを確認している.
クサアリ亜属の同定
Maruyama 2005において, 日本のクサアリ亜属(Dendrolasius)は以下の5つ,
フシボソクサアリ(Lasius nipponensis)
Yamauchi 1979のL. crispus はシノニム
モリシタクサアリ(Lasius morisitai)
L. morisitai とL. capitatus はシノニムであるとしてL. capitatus で統一されているが, ここでは日本産アリ類図鑑に準拠してL. morisitai の方を採用した.
テラニシクサアリ(Lasius orientalis)
Yamauchi 1979のL. teranishii はシノニム
ヒラアシクサアリ(Lasius spathepus)
クロクサアリ隠蔽種群(Lasius fuji)
Radchenko 2005においてL. fuliginosus とは別種であると指摘. Yamauchi 1979がL. fuliginosus と表記しているものはL. fuji のことであると考えられる.
以下に, 同定形質をまとめる.
- 側面から見て腹柄節の前後幅が薄く, 先端が尖っている(触角柄節の断面は丸)
- 腹柄節が前後非対称:ヒラアシクサアリ(Lasius spathepus)(前胸背板の立毛>小顎鬚)
- 腹柄節が前後対称:フシボソクサアリ(Lasius nipponensis)(前胸背板の立毛<小顎鬚)
- 側面から見て腹柄節の前後幅が厚く, 先端が平らになっており, 前後から見て上にいくほど幅が広い (触角柄節の断面は楕円)
- テラニシクサアリ(Lasius orientalis)
- 側面から見て腹柄節の前後幅が厚く, 先端が丸みを帯びている (触角柄節の断面は楕円)
- 腹柄節が前後対称:クロクサアリ隠蔽種群 (Lasius fuji ) (頭幅≒頭長)
- 腹柄節が前後非対称:モリシタクサアリ(Lasius morisitai ) (頭幅>頭長)
行動学的な知見
近日公開予定.
文献
寺山 守, 久保田 敏, 江口 克之 2014. 日本産アリ類図鑑, 朝倉書店
Yamauchi, K. 1979. Taxonomical and ecological studies on the ant genus Lasius in Japan (Hymenoptera: Formicidae). I. Taxonomy. Sci. Rep. Fac. Educ. Gifu Univ. (Nat. Sci.), 6, 147-181.
Radchenko, A. 2005. A review of the ants of the genus Lasius Fabricius, 1804, subgenus Dendrolasius Ruzsky, 1912 (Hymenoptera: Formicidae) from East Palearctic.”Annales Zoologici. 55(1):83-94.
Maruyama, M. 2005. A new synonym in the subgenus Dendrolasius of the genus Lasius (Hymenoptera, Formicidae, Formicinae). Bull. Natn. Sci. Mus. Tokyo, Ser. A, 31: 115-117.